難しいササニシキ稲作


「稲は南国の作物だから・・・」


 これは知り合いのお爺さんの言葉です。大正生まれのお爺さんは稲作農家の使用人である「手間取り」を経て、借金で田んぼを購入し、家族を養うため稲作一筋で生きてきたお爺さんの言葉です。


 稲作のルーツはインドとか中国の雲南省とか、様々な説があります。いずれにしても日本より遠い南の国であり、お爺さんの言葉には間違いはなさそうです。


 日本で始めて稲作が始まったのは弥生時代とされてきましたが、最近の研究では縄文時代にまで遡れるようです。その時代の遺跡から米が発掘され、それから日本で最初に栽培されたお米は「赤米」だったのではないかと言われています。 


 この赤米は赤飯のルーツと言われ、そしてまた「うるち」米のルーツであるとも言われています。これと同じ頃、中国や東南アジアでは「黒米」が栽培され始めました。この「黒米」は「もち米」の先祖とされています。


ササニシキの誕生


 昭和38年、宮城県の古川市にある農業試験場で「ハツニシキ」と「ササシグレ」を両親とする新しい「稲」が誕生しました。


 「ハツニシキ」からは粒の輝きと茎のしなやかさを・・・

   そして「ササシグレ」からは米の美味しさと豊潤な稔りを・・・


  その両親の長所を引き継い稲は「ササニシキ」と名付けられました。そしてまた、この稲は「赤米」の遺伝子も強く引き継いでいるようです。


北国のササニシキ


 さて、ササニシキの難しさですが、それは


   ・倒れやすい

   ・病気になり易い


 の二つがあります。  「倒れやすい・・・」とは、文字通り稲が倒れやすくなることです。


「稔るほど、頭を垂れる稲穂かな。」

倒れた稲


という諺がありすが、稲が穂をつけ、そして稔りを豊かに倒れた稲していくにつれ、だんだんと穂が重くなっていきます。その姿は「豊かな秋」をイメージさせますが、しかしこの季節、しばしば秋雨前線が、水田地帯を通過していきます。


 穂が重くなり、辛うじてそれを支える秋の稲、ここに強風を伴う台風が到来したとしたら・・・。
   たぶんその強風は茎の弱い稲をノックアウトすることでしょう。ササニシキは一本の茎から数多くの稔りをつけますが、それが時として仇となり、ノックアウトされやすくなってしまうのです。


 収穫間近の稲が倒れますと、穂と穂が密着して重なり合い、風通しの悪い状態におかれます。そして朝露や秋雨が倒れた稲穂を濡らしていき、それが乾かぬまま稲穂を蝕んでいくのです。


 こうなると米を収穫しても、品質が悪化してしまい価値が下がるため、農家収入が減少しまうことになります。ゆえに「倒れやすいササニシキ」は、稲作農家にとってリスクの大きい品種と言われるのです。


次にササニシキの「病気のなりやすさ」です。


 これを説明するためには、ササニシキの故郷、宮城県の気候について説明する必要があります。


 宮城県の位置する東北地方、同じ東北地方とはいえ日本海側と大平洋側ではだいぶ気候が異なります。冬、大陸からの季節風が湿った日本海上空を通過し、そして奥羽山脈にぶつかります。これがたくさんの積雪を日本海側の地方にもたらすわけです。

葉イモチに感染した稲


 奥羽山脈は東北地方を背骨のように縦貫し、それにより日本海側と隔てられた大平洋側では、割と乾燥した気候が続くのですが、山脈に積もった積雪は春になると溶け始め、大平洋側と日本海側、いずれにも潤沢な雪解け水を供給します。


 このように、東北地方の気候は奥羽山脈により、大きな影響を受けるわけですが、夏になると、今度はその存在が、大平洋側に大きな災いをもたらすことがあります。それは「やませ」と呼ばれる現象です。


 初夏の頃、冷たく湿気の多い気団がオホーツク沿岸に発生し、そして除々に大平洋側から日本に向かって南下してきます。そしてついには奥羽山脈とぶつかって、青森県東部や岩手県、宮城県北部といった北東北の大平洋側に滞留することになります。


 これが「やませ」と呼ばれる気象現象で、濃霧のようなゆっくりとした風が特徴です。


 この「やませ」も、いずれは南から北上する大平洋高気圧により追いやられるのですが、時としてその勢力が衰えず、そのままこの地域に居座ることがあります。
 こうなると、稲は「イモチ」という病気に罹り、冷害となってしまいます。


 イモチという病気は、イモチ菌が発生源となりますが、それは「やませ」の気象条件下で最も勢力を逞しくします。


そしてササニシキは、このイモチに弱いのです。


 思い出してみると、東北地方を襲った冷害は、だいたい10年程度周期で訪れています。昭和55年、平成5年、平成15年、これが最近の冷害発生年です。


「稲は南国の作物だから・・・」


 冒頭のお爺さんの言葉は、直接的にはこの「やませ」に苦しまされてきた、その経験から発せられる言葉だと感じています。

豊かに稔ったササニシキ


 かつては、コシヒカリと並ぶ米の横綱とまで称されたササニシキですが、平成5年の大冷害(タイ米やカリフォルニア米が輸入され、インディカ米で握ったお寿司が話題となりました。)で大きな被害を受け、そして新しく品種改良された「ひとめぼれ」などに、その主役を譲り渡すことになりました。


 現在、日本における作付け面積のトップに位置するのは「黒米」の特徴を色濃く受ける「コシヒカリ」となっています。
 一方、「赤米」の特徴を引き継ぐササニシキは、故郷である宮城県においても、作付け割合は10%程度(平成18年)にまで落ち込んでいます。


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