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 無農薬の稲作「育苗と雑草」
 さて、今度はササニシキから話題を変えて、自然栽培の稲作についてです。私達の提唱する自然栽培の稲作とは「農薬も、化学肥料も、そして有機肥料も用いない稲作」のことです。
無農薬ならいざ知らず、肥料さえ使わない稲作!?

 と驚かれる人も多いかと思いますが、順次、この自然稲作について解説してみます。まずは農薬を使わない稲作についてです。

 一言に農薬と言っても、栽培過程で、それぞれに使用する農薬が異なってきます。

■ 種籾の消毒
 始めに種籾の消毒です。これは種に付着している病原菌、特にイモチ菌を殺菌するために用いる薬剤です。これで種籾を処理することで、田植え後の稲が

イモチに罹るリスクをできるだけ取り除く


のが目的です。
 こういった薬剤を用いずに種籾を消毒する方法として「温湯消毒」があります。これは菌が死滅する温度に着目し、種籾をお湯に漬けて消毒する方法です。
 
種籾の「塩水選」、比重が小さく弱い種籾を取り除く
減農薬稲作が普及した昨今、この方法は広く普及するようになりました。
 もっとも私達の取り組む自然栽培では、薬剤はもちろんのこと、温湯消毒さえ施していません。
 これは、事後に述べる栽培方法を実践し、その経験からイモチのリスクは大きな驚異にならないと考えたからです。

■ 除草剤
 種籾から苗を育て、これを今度は田植えすることで、水田での稲作が始まります。田植えが終わると、それを待っていたかのように水田の中から雑草が発芽してきます。
 こういった雑草を抑制するため、通常は田植え前に除草剤を散布するわけですが、
 無農薬の稲作の場合、この雑草への対処が大きな課題となってきます。


▼昔の除草作業、手取りや機械による除草

 農薬がまだ一般的でなかった頃、雑草を取り除くために、昔の農家は「腰を曲げ」ながら、水田の除草を行いました。これは田植え直後から始まり、稲が雑草に負けない程度に成長するまで行われます。
 
乗用除草機で作業を効率化する
水田に次々と発芽してくる雑草を「一番〜三番草」と呼び、6月上旬〜7月上旬まで毎日水田に行って、同じ場所を3回4回も繰り返して、手取り除草していたのです。
 現在では、各種除草機械も考案され、「腰を曲げず」とも除草作業ができるようになりましたが、やはり同じ場所を3回程度は除草しないと、なかなか除草の効果が得られないようです。
 
 私達の自然稲作でも、手取り除草や機械除草を取り入れています。


 しかし、これだけではなかなか除草の勢いは治まらず、場合によっては、さらに雑草を勢いづかせることもあるようです。そのため、除草機以外にも工夫を凝らしているのです。

▼苗代育苗で大きな苗を育て、雑草にハンディーをつける

 その一つは昔ながらの苗代で苗を育てることです。先に、昔の除草は「雑草に負けない程度」に稲が成長するまで続けられたと書きました。と言うことは、できるだけ大きく成長した苗を用いて田植えしたほうが、そ
苗代による育苗
れだけ雑草に脅かされる期間が少なくて済むという理屈にもなります。

 そのため、より大きな苗を育てられる苗代育苗を行ったほうが、より有利であろうと考えたわけです。
 田植えを行い、そっから稲と雑草の競争が始まるわけですが、できるだ雑草に生育期間のハンデーを負わせるという考え方です。

▼水と土により雑草の発芽を抑制する

 次の方法として、雑草を発芽させないため、水田を何らかの資材で覆うという方法があります。これを行うために紙などで水田を覆う方法(紙マルチ)なども提唱されています。
 私達は自然栽培を理想としていますから、そういった水田外部からの資材を利用することは、できるだけ避けるように努めています。

 そして実は田んぼには、それだけで雑草の発芽を抑制する「自然の被覆材」があります。それが「水」と「土」なのです。

  水と土!?
 なんで、それが雑草を抑制する被覆剤になるの!?


 そう思われる方も多いでしょうが、きちんとした理屈があります。

▼水による雑草の抑制
 まずは水です。
 水田は畑と異なり水を張ります。ゆえに水田は水田であるわけですが
「水を張る」、

たったこれだけのことで、多くの雑草は発芽できなくなります。

 
次々と発芽し、繁茂する雑草
もし、お近くに農薬を使わない畑、あるいは水田があるならば、それぞれに発芽しいる雑草を比べていただけたらと思います。
 水田よりも畑の雑草のほうが、多種多様であることに気が付くはずでしょう。
 多くの雑草は発芽に酸素が必要であり、水を張れば、それだけで雑草の抑制につながるわけです。もっともこれは水田全てが同じ条件ですから、これだけでは稲作における特別な雑草対策にはなりません。
 私達が工夫するのは、水の深さにあります。


 水に沈んだ物体には浮力が働きます。そして水を深くするほど、その浮力は大きくなっていきますが、発芽したての雑草の芽は土に根を固定する力が弱く、田んぼの水が深ければ深いほど、発芽が阻害される
農薬・化学肥料を使う田んんぼの土、ザラザラして硬い肌触りである。
ことになるわけです。このように水を深く張ることを「深水管理」呼びます。

 こういった雑草を抑制するための深水管理を行うためには、できるだけ背の高い苗を用いるのが効果的です。
 なんといっても、水を深くすることで苗を窒息させてはもともこもありませんからね。

 ゆえに、苗代でできるだけ大きな苗を作る、という効果はここでも現れてくるわけです。
 
▼土による雑草の抑制
 今度は、土による雑草の抑制ですが、これは通常、田んぼを乾かす時期となる冬期〜春期に、あえて水を張る「冬期湛水/ふゆみずたんぼ」という方法により工夫します。
 
自然栽培ササニシキの田んぼのトロトロ層、ヨーグルト状である
このように長期に渡り水田を灌漑しておくと、水田表面には、非常に粒子の細かく、そして流動性の高い土が堆積してきます。
 これを「トロトロ層」と呼んでいますが、これはイトミミズが形成すると言われています。このトロトロ層が雑草の抑制に役立つのです。
 水による雑草の抑制では、「水を深くすると、浮力が働き雑草の芽が土に固定できなくなる。」、そう記しました。
 そうした深水条件で粒子が細かく、流動性の高いトロトロ層が水田を覆っていたら?
 さらに雑草は芽を固定し難くなることでしょう。そしてまたトロトロ層があれば機械除草も効果的に行うことができる、といったメリットもあります。
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