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 無肥料の稲作「生き物が与える自然の恵み」
 農薬を使わず、そして冬期〜春期の農閑期にも水田を灌漑することで水田には多量のイトミミズが繁殖します。

 このイトミミズが水田土壌に大きな変化をもたらすのです。

 灌漑期、水田土壌は水に浸かることで酸素欠乏状態になります。
田面のイトミミズ
そしてそれがリンを水に融解させ、作物に吸収し易い状態に変化させます。

 しかし土壌が酸素欠乏状態であったとしても、灌漑水中には酸素が含まれており土壌表面には非常に薄い酸化層の膜(酸素を多く含んだ酸化鉄が主体)が形成されます。
 酸素欠乏の還元土壌で水に溶けたリンはこの酸化層で鉄と結合してしまい、水に溶けない状態に変化してしまいます。

 ところで、この土壌にイトミミズがいたとします。イトミミズが生息するためには酸素が必要です。しかしイトミミズの餌の大部分は酸素欠乏状態の還元層にありますから、その結果としてイトミミズは還元層と田面水の境界で生息することになります。そして、そこには薄い酸化層の膜があるのです。

 イトミミズはいつも体をユラユラ揺らしていますが、これは体の周りに新鮮な水が触れるようにするためで、それにより水分中の酸素を吸収しています。この体のユラユラが酸化層を破壊していきます。

 酸化層の膜が破壊されると、今度は還元土壌中で水に溶けていたリンが、田面水にも溶けだしてきます。

 リンは植物性プランクトンの重要な養分であり、これが田面水に移行すれば多種多様な植物性プランクトンが増殖します。そして、そのいくつかの種類は空気中から窒素を固定する機能を持ったものもあると期待されるわけです。


 事実、私達が稲作を行う水田の水の色は、明らかに通常の稲作のものに比べて濁りが濃く、これはある種のプランクトンが増殖していた証拠であると考えています。

各地の水田の水の色を比較
 こういったプランクトンのいくつかが空気中から窒素を取り込んでいるならば、その死骸が水田土壌に蓄積し、そして稲作の窒素養分となるだろうと期待するわけです。

 もっとも、こういった効果がどれほどのものであるかは、経年的に水田を観察し判断する必要があります。
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