自然とともに歩む稲作「水中から空へ」


 地球に始めて生命が誕生したのは、水の中だと言われています。水は有害な紫外線から命を守り、芽生え始めた生き物を涵養してきました。


 そもそも水中は陸上よりも、それほど「重力」による移動の制限を受けません。

一躍、渡り鳥の楽園となる「冬期湛水
水田/ふゆみずたんぼ」

 陸上であれば、空を飛べる生き物は限られており、だいたいの生き物は地表面で生活していますが、水中では、その中を立体的に移動できる生き物がほとんどです。
 つまり、水中は陸上に比較して生き物の生息空間が立体的となり、それだけ限られた空間の中での物質循環も効率的になるわけで、それがゆえに水中では生き物を涵養できるという理屈です。


 そしてさらに空間的だけでなく、農閑期(冬期~春期)にも水田に灌漑する「冬期湛水、ふゆみずたんぼ」にように、時間的にも潤沢な「水中」の存在を長くすれば、なおのこと多くの生き物を涵養できる理屈になるでしょう。


 次に、水が土壌に与える変化です。


生き物の活動が、生物空間の活性化させる


 水が土壌に変化を与える・・・


 このことは「無肥料について」の項でも書きましたが、土壌が水に浸されると土壌分子と結合していたリンが水に溶けだします。しかしながら、田面の表面には今度は酸化鉄による膜が覆い始め、これがリンを水中に移動するのを抑制します。

農薬を使わなければ水田にユスリカ
が増え、これを目がけて燕が集まる。

 ところが、そこにイトミミズがいると、その酸化鉄の膜を攪乱するため、ついに地中から水中へリンが移行し始め、そしてそれを養分とする各種植物性プランクトンが増殖していくわけです。


 そして、今度は植物性プランクトンを餌にする動物性プランクトンが増殖し、ミジンコが増えて、タニシが増えて、メダカやドジョウが増えて、ザリガニが増えて、それを食べるサギがやってきてと・・・


 こういった過程でイトミミズのような微細な生き物の土壌攪乱が、


様々な生き物を育むきっかけとなる


 わけで、そういう役割からもイトミミズなどの低生生物は生き物の生息空間を豊かにする大きな役割があるようです。


 余談になりますが、宮崎駿夫氏のアニメ作品である「風の谷のナウシカ」ではオームという低生生物のお化けみたいのが第二の主役でした。これは自然界における低生生物の重要な役割について、宮崎駿夫氏が注目していたのだろうと勝手に想像しています。


鳥は地上における物質循環の王者


 前項では「田んぼの水の中」といった、目に見えるか、見えないか、そういう非常にミクロ的な視点から生き物の関係を考えてきました。


 今度は、もっと大きな視点、


山があり、空が開け、その向こうには、海が広がる


、そういう雄大な眺めから、生き物の関係を考えてみます。

夏から秋にかけて無農薬の水田には
サギが多く見られる。


「地上の世界」、それは水中の世界に比較して、より重力の影響を強く受ける世界です。水中では、上下左右、自由に空間を移動できる生き物が大部分ですが、陸上ではそういうわけにいきません。


 植物、両生類、は虫類、哺乳類その大部分は、地上を生活の場所とし、その活動範囲も平面的です。


 しかしながら昆虫と鳥は空を飛ぶことができますから、他の生き物に比較して比較的自由に空間を移動することができます。


 昆虫は、「害虫」の項でも記したように、偏西風に乗って渡洋移動を行うこともありますが、鳥はさらに大きく空間を移動します。


 例え目の前に「断崖の絶壁」があろうと、「激流の河」があろうと、「人跡未踏の密林」があろうとも・・・、鳥は「空間の上下移動」といった特別な能力で、そういった障壁を易々と移動していくわけです。


 さて、地上は水中に比較して、より強く重力の影響を受けます。


 ここに、一つの山があったとします。その頂には岩がゴロゴロ転がっており、土は痩せ、小さな砂漠のような風景があります。しかも、そこは頂ですから、強風にさらされ、雨に洗われ、表面の土砂は「重力」の法則に従い、だんたんと頂から山の斜面にずり落ちていきます。
 ですから、その頂はさらに、さらに、「重力の法則」に従って砂漠の風景を広げていくはずなのですが・・・・


 しかし数年後、その砂漠を再び訪れると、そこに木の芽が、とても小さく、しかし。しっかりと根を張っていました。


「この芽の種はどっからきたのか?」


 そう思い、風にそよぐ芽を見つめていると、黒い影が頂の地表を横切りました。一瞬の出来事です。頭上に目を向けると、数羽の鳥が遙か向こうに飛び去っていく姿が見えました。そして再び注意深く地表を観察してみると、そこに白い斑点があることに気が付いたのです。


 鳥は重力に逆らいリンや窒素を多く含んだ糞でコーティングした植物の種を山の頂に運んできます。

農薬を使わない水田に復活した絶滅危
惧種の「ミズアオイ」

 このようにして、鳥は地上の物質循環を広げていくわけです。








 冬期湛水水田(ふゆみずたんぼ)は単に無農薬水稲のためだけだけでなく、地上の物質循環の王者である「鳥」の休憩場所となる効果もあります。


 冬の田んぼに水を灌漑すると、そこは冬の水鳥の絶好の餌場となります。そして物質循環も盛んになって、田んぼには見たこともない雑草が芽を出してくる。なんてこともありますけれど・・・


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